何年もの歳月を経てきたかのような、その表情が魅力の安福由美子(やすふくゆみこ)さんのうつわたち。
趣味で毎週日曜日に陶芸レッスンに通っている私が、おこがましくも、いつかこんな風に作れたらいいのになぁと毎日うっとり眺めているうつわです。
今日はアンジェの「あきいろ作家市」から、岐阜県岐阜市で作陶をされている安福由美子さんについてご紹介します。
■ 安福由美子さんのこと
お子さんが大きくなったタイミングで、趣味だった陶芸を更に学ぶために京都造形芸術大学の通信のコースをとったという安福さん。試験の日にお子さまが熱を出したりと、卒業までに5年かかったとおっしゃいます。
その後はうつわ作りを続けながら、岐阜駅の近くでカフェを営むことに。ご自身のうつわを使って料理をお出しするそのカフェはたくさんのお客さまに支えられていたそうですが、両立が難しくなったため作陶に専念することにされたのだそうです。
上:庭に面した安福さんの作業場に流れるのは静かな時間。
下:アートピースも多い安福さんの作業場で。
上:安福さんが15年ほど前に作ったという絵付けの茶器。正倉院展でインスピレーションを受けたという鳥のモチーフは、ある程度の形を描いて後からかき落としたもの。
下:愛猫の足跡に錆釉をのせた、まるで小石のようなオブジェ。
半熟卵がのったキーマカレーに、彩り野菜のサラダに、ピクルス。まるで安福さんのカフェに訪れたかのような気分。
インスタグラムなどでもたくさんのお料理上手やコーディネート上手のファンの方に支えられている安福さんですが、カフェを営んでいたこともあってご本人もとってもおもてなし上手。
安福さんのご自宅にお邪魔した際には、ご自身のうつわでお手製ランチをご馳走になりましたよ。
■ お手入れについて
ようやくたどり着いたその錆色は、安福さんが苦労を重ねてたどり着いたもの。釉のかけ方や濃度や温度の差など、ちょっとしたことで大きく異なってきてしまうそう。
佇まいにどこか品のある安福さんのうつわたち。
時を重ねた金属のような表情を持つそのうつわたちはひとさらひとさらがとても力強いのに、のせた料理をよく引き立てます。
その使いやすさの秘密はこんなところにも。
安福さん
「本来とてもシミがつきやすいうつわなんですが、私の方で目止めの加工を行っているんです。無害の樹脂系のもので行っているので、シミになりづらいはず。さらに、使う前にさっと水に通していただければうつわへの負担がもっと少なくなりますよ。
経年変化はどうしてもあるので、うつわの成長をゆっくりと愉しんでいただければと思います。」
上:稜花の形に模った土の板を、石膏型にのせてカーブをつける稜花皿。
下:安福さんの作業場にはたくさんの石膏型が。
女性であり、母であり。使い手でもある安福由美子さんがつくる、錆色のうつわたち。
ひとさらあるだけで食卓に品が生まれる、そんな力の強い手仕事のうつわです。
= 文・写真:宮城 =