阿部春弥さんは、凛としていながらもどこか柔らかな、日常使いのうつわを作られる作家さん。
今日は、長野・上田で作陶をされている阿部春弥さんについてご紹介します。
阿部さんのうつわは、現在1年半待ちなんだとか。数も少なめですのでどうぞお楽しみに!
■ 阿部春弥さんのこと
実は、今回で2回目のお声がけとなる阿部春弥さん。
1回目はお忙しいことが理由でご参加いただけなかったのですが、その際に「こりずにまたご連絡させてください!」と引き下がり、本当にこりずにまたお願いをしたという私たち。(阿部さん、しつこくてゴメンナサイ。笑)
2回目となる今回、こうして皆さんに阿部さんのうつわをご紹介できることが本当に嬉しくてたまらないのです。
ロクロでひいたうつわを型にのせて。九州から取り寄せている磁器土は肌が白く焼きあがるから、釉薬がきれいにのるんだそう。
牡丹豆皿の石膏型を外せば、ほら、この通り。
型うちをした後、素焼きを待つうつわたち。
ご自身のことを作業員だという阿部さん。
お気に入りのご自身のうつわや好きな工程もないんだとおっしゃいます。
期待していた言葉とはまったくかけ離れた阿部さんのそのお言葉に、私たちもなんだか苦笑い(笑)
でも、その言葉には阿部さんの哲学が詰まっているような気がしたんです。
阿部さん
「モノにも工程にも思い入れは入れ過ぎないようにしているんです。
お気に入りがあるとすれば、お気に入りでないものがあるということになる。それをお客さまにお売りするわけにはいきませんから。
考えてしまえば数も作れないですし、ね。」
デザインを決める型があり、ロクロでひく時も型より大きく作ればよく、日々のその手仕事を「ここどうやろうかなと悩まずにすむ仕事」と阿部さんはおっしゃいます。
悩まずにすむように組み立てたのはあくまでも阿部さんによるもので、さんざん悩んだ経験がないことにはきっと取れない選択肢。
阿部さんのうつわに映りこむ「潔さ」は、こんなところからきているような気がしています。
■ 大らかな色を帯びた、日常使いのうつわ
ルリ、淡ルリ、黄磁、白磁と、端正な形にのせた4色の深く味わいのある釉薬たち。
今は調和の取れた4色のうつわを作られる阿部さんにも、白磁しか作らない時代があったそう。
阿部さん
「もともと備前にいたこともあって、形を作りこむことが好きだったんです。だから色にこだわる必要がなかったんですよね。
でもある時、お付き合いのあるお店の方に「作りませんか?」と言われてこのルリを作りました。もともと白だけのところに新しい色を差し込むということに自分で納得し、作りたい色が見えるまでに3年かかりましたし、その方の言っていた色とは異なるものになっちゃいましたけど。
黄磁は、日本食を作られる方から黄色は料理映えするんだけど黄色い和食器が少ないということを聞いて作ってみたんです。これも1年かかりました。」
ずらりと並んだ石膏型。こういうものが欲しいと構想が固まってから作り出すのでそれほど時間はかからないと阿部さんはおっしゃいます。中には備前の焼き締めの古いお皿の模様を模したものも。
作業場にはお子さまが描いた朗らかな絵が。
デザートには奥さまお手製の梅の甘露煮。しのぎの豆皿でいただきます。
料理が映える、阿部さんのうつわたち。
繊細で冷たい感じさえする磁器も多い中で、阿部さんが生み出す磁器のうつわは潔さを持ちつつもどこか優しげ。
阿部さん
「温かみのある、柔らかなものを作っていきたいんです。僕が作っているものは、日常使いのものですから。」
いつものおうちごはんを大らかに受け止めてくれる阿部春弥さんのうつわたち。
ぜひご自宅の食卓に並べてみませんか?
= 写真・文:宮城 =
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