温かな飴色と藍色のぽってりとしたそのうつわからは、彼女のけたけたと笑う楽しそうな声が聞こえそう。
9月21日(木)と29日(金)と2週間に分けて公開される、アンジェの「あきいろ作家市」。
全国各地から総勢10名もの作家さんたちにご参加いただくこのイベントから、今日は栃木県・益子町で活動される作家さん、豊田雅代(とよだまさよ)さんについてご紹介しますね。
■ 豊田雅代さんについて
茶目っ気たっぷりにくしゃっと笑う、豊田雅代さん。
2016年の春の陶器市で撮ったこの写真は、まるで豊田さんのお人柄がジワッとにじみ出るよう。
見ればこちらの顔までついついほころんでしまうような、今でも大好きな1枚です。
実はその頃からずっとお声がけをしていた豊田さん。
ご出産などのタイミングも重なって、今回ようやくアンジェのあきいろ作家市にご参加いただくことに。
まだまだ暑い8月のある日に、栃木県は益子町にある豊田さんの作業場までお邪魔してお話を伺ってきました。
豊田さん
「私は一度ほかの仕事を経験していますが、生まれも育ちももともと益子なんです。まわりにも焼きもの屋さんの子が多かった。
上京する時には友達の家に呼び出され、そのご両親が作ったうつわが並べられた庭で「好きなものを持って行け。」と言われたこともあるんですよ。
聞けば銀座などでも個展をされるご両親。「東京でどこから来たと聞かれたら、こういう町から来たって言うんだよ」と教わりました。
そんなことがベースにありながらいろんなことが重なって、益子に戻って焼きものの仕事がしたいと思うようになったんです。」
様々な経験を重ねられた後、益子町で2012年に独立された豊田さん。
今は、ケーキなどにあしらうペーパーレースなどをモチーフに、クリームでデコレーションするように模様を描く「イッチン」という手法を使ってうつわを制作されています。
粘土を水で溶いて、水ガラスでとろみをつけた「泥漿(でいしょう)」を使って模様を描くイッチンの技法。水で溶いただけではドロドロ過ぎ、水ガラスを入れればサラサラとして描くにちょうど良い具合となるのだそう。
素焼き前に行うイッチンの作業。模様を描く道具は、チューブの硬さがちょうど良い、100円ショップで見つけてきたお気に入り。
フリーハンドで描くのは、ツタ模様。そのインスピレーションはケーキのレースペーパーだったり、お菓子の袋だったり、アイシングクッキーの本だったり。日常の何気ないことからヒントを得ているとおっしゃいます。
そんな豊田さんの作業机にふと目を落とすと「1枚1枚はがして食べちゃう」の文字。
ラジオを聴きながら作業をするのが好きだという豊田さんが、懸賞に必要なキーワードを慌てて手元にあったボールペンでメモしたものなんだとか。
なんとこの後バームクーヘンが当たったそうですよ♪
「ラジオを聴くのが大好きで、ラジオが聴きたくて作業をするようなものなんです~」とはにかむ豊田さん。大好きな星野源さんのサイン入りメモパッドが当たったり、深夜2時に大宮エリーさんと話してサイン本も当たったとおっしゃるツワモノです。
最近お母さまになられたばかりの豊田さん。
豊田さん
「ゆくゆくは子どもが使うプレートなんかも作れたら。今はまだちょっとそんな余裕はないんですが、想像だけは楽しんでいます。」
お母さまになられたことでうつわに踊るその無邪気なイッチン模様の表情がどう変化していくのか、これからもとっても楽しみな作家さんです。
= 文・写真:宮城 =