ゆるり色絵の筆が踊るのは、金沢の作家・赤地径(あかじけい)さんの色絵皿。
おしゃべりしているような色とりどりの千鳥たちに、そっと微笑む加賀八幡さま。まるで赤地さんのはなうたが聴こえるようなそんなうつわたちに魅せられて、金沢にある赤地さんの工房までお邪魔してきました。
■ うつわに映る、赤地径さんという人
金沢駅からタクシーを少し走らせた、海からの風を感じる場所にある赤地さんの工房。そこには陶芸家であるお父さまのうつわと、赤地さんのうつわが所狭しと並んでいます。
奥さまの映里さんと赤地さんのやり取りが楽しくて。ほっこり心温まる時間です。
「うつわを始めるのに、立派な動機なんてなかったんです。」
そう申し訳なさそうにおっしゃる赤地さん。
21歳の頃にお父さまのすすめで九谷焼技術研修所へ通うようになり、やっているうちに面白くなったんだとおっしゃいます。その後、多治見の意匠研究所へ通い陶芸を学んでいるうちに奥さまの映里(えり)さんと出会うことに。
映里さん
「彼は、意匠研究所にふら~っと来て、ふら~っといなくなっちゃったんです。でもね、そのうつわはひょろひょろっと描いているけど、何か面白くて。変な気負いがなくて肩の力抜けまくり。でも、人に愛されるうつわで。才能あるなーって当時から思っていました。」
そのすぐそばで、まるで初耳かのように「え?そうだったの??」と少しはにかみながらご自身のことを聞いている赤地さん。おふたりの掛け合いに思わずくすりとしちゃう、そんな赤地さんの工房です。
■ ついつい顔がほころぶ 手仕事の色絵皿
金沢に生まれたことを縁とし、昔ながらの九谷の土を用いて、赤・黄・緑・紫・紺青といった九谷の伝統的な五彩の絵の具で絵付けをすることを大切にされている赤地さん。そのうつわにも、古くからある日本の縁起物の模様や形が多くみられます。
型の上にのせて叩いた土の余分な部分を、「弓」と呼ばれる道具で削っていきます。
土の表面には片栗粉がまぶしてあるから、するっと型から外せます。
「見てると手が震えちゃう。」なんてつぶやきながら、大胆に筆を躍らせて描かれていく九谷五彩の牡丹。
右上から反時計回りに、型、型で形作った下焼き前の素地、下焼き後、絵付け後、完成形。
大胆な筆運びは、土の柔らかさを残すようにロクロをひいて軽いタッチで描くお父さまから受け継いだもの。「なかなか真似できない」というお父さまのそのタッチを思い描きながら、肩の力をゆるめて、ただひたすらに自分が面白いと思えるものを追い求めている赤地さんです。
= 文・写真 宮城 =