山田奈美さんに教わるぬか漬け特集。ずっと始めてみたかったぬか漬けのいろはを、山田奈美さんに教わりながら2回にわたってお届けしています。後編の今日は、ぬか床トラブルのお手軽対処法と、ちょっぴりズボラな私がずっと作りたかったMYぬか床のその後のお話。
素朴でありながら食卓がぐっと豊かなものに感じられるぬか漬けは、また自分が漬けたと思うとその美味しさもひとしおです。新しい年になったこのタイミング。まずはゆるりと、美味しいぬか漬け生活始めてみませんか?
・山田奈美さん、教えてください。初めてのぬか漬け =前編=
■ 山田奈美さんに教わる、ぬか漬けトラブルお手軽対処法
ぬか漬けはまるで生き物のようなもの。わが子のように世話をすることで、美味しく漬かるようになると山田さんはおっしゃいます。
ちょっとしたトラブルだって、対処法を知っていれば大丈夫。まずは前編で作った自分のぬか床のことをよく理解して、じっくり楽しみながらご家庭の味に育ててみましょう。
Q1・ぬか床がゆるくなってしまいました。
山田さん
「ぬか床が水っぽくなると過剰発酵しがち。新しいぬかと塩を足して固さを調整しましょう。また、水分には野菜の栄養やうまみがしみ出しています。干しシイタケなどの乾物で水分を取れば、そのままぬか漬けとして生で美味しくいただけます。」
Q2・変な匂いがします。
山田さん
「シンナーやカビのような匂いは産膜酵母という酵母の一種が増えすぎたために起こるもの。またムレた靴下のような匂いがするのは、ぬか床の底に酪酸菌が増えすぎています。これはいずれもかき混ぜ不足が原因。上のものを下へ、下のものを上へとしっかりかき混ぜることが大切です。また水分の量によっても匂いがすることがあるため、水分を適量(ぬかを握った時に指の間から水がしみ出す程度)にすることは大切です。」
Q3・表面にカビのようなものがはってしまいました。
山田さん
「黒や青など色つきのカビが繁殖したときも慌てずに。すぐにカビを取り除いて、カビと接しているぬか床も少しスプーンで削りましょう。表面にうっすら白い膜がはっていたらそれは産膜酵母です。うっすらはった程度であれば、ぬか床にそのまま混ぜ込んだほうがよりぬか独特の風味がよくなります。」
Q4・毎日かき混ぜなくちゃダメですか?
山田さん
「本来は1日1回~2回かき混ぜる必要がありますが、どうしてもという場合は冷蔵庫で管理する方法も。発酵が遅くなる代わりに雑菌の繁殖も抑えられるため、毎日かき混ぜなくても傷みにくくなります。ただし、長く冷蔵庫で漬けていると風味が薄くなることも。そんな時は時々常温に戻してあげるとよいでしょう。
Q5・長期間留守にしたいのだけど・・・
山田さん
「2週間程度であれば、中の野菜をすべて取り出して表面にぬかを敷き詰め塩(ぬかの重量の7%)をふり、唐辛子1本をのせておけば大丈夫。帰ってきたら、そのままかき混ぜて使えます。それ以上の長期になる場合は、野菜をすべて取り出したぬか床をジップロックなどに移し替えて冷凍庫に保存します。戻ってきたら、自然解凍すればまた今まで通り使えますよ。
ぬか漬けは、昔はどの家でも漬けていた暮らしの発酵食。ご家庭によって少しづつお手入れが異なり、そのどれもこれもが正解です。
山田さんが「身構えなくてもいいんですよ」と言って教えてくれたのは、昔ながらのシンプルな方法でありながら、今の私たちの暮らし方に馴染むもの。きっと気負わず楽しんでいただける、そんな基本のぬか漬けです。
■ おまけ・ちょっぴりズボラな私も「ぬか漬け生活」始めてみました
もう最初から決めていたんです。
おばあちゃんになってもぬか漬けを続けるために、ズボラな私は最初から冷蔵庫に入れてしまおうって。
いきなりそう宣言する私に山田さんも困り顔。でも山田さんはイイともダメとも言わず、「ふとね、あんまり美味しく漬からないなって感じることがあると思うの。そうしたら冷蔵庫から出してあげて常温にしばらく置いてあげてくださいね。」って、お友達のことを話すかのようにそっと優しく教えてくださったんです。
作った当日の夜に、迷いなく冷蔵庫に入れたMYぬか床。冷えすぎて発酵が進まずなかなか本漬けに入れないということもあったけれど、山田さんに相談しながら無事に美味しく漬けられるようになってきました。
ハマってしまったのが、固ゆでしたジャガイモとカリフラワーのぬか漬け。
朝はパン派だけれど、仕事から帰ってきて「漬かっているかな~」とぬかをかき混ぜる行為はまるでペットを愛でているみたい。
冷蔵庫を使いながら上手にお付き合いをして、おばあちゃんになるまでじっくりゆっくり楽しみたいそんな私のぬか漬け生活です。
温度の低いこの時期は、初めてぬか漬けを行うにはお手入れの負担の少ない良い季節。新しい年の始まりに、ゆるりと始めるこんなぬか漬け生活はいかがでしょうか。
= 文・写真:宮城 =
プロフィール
山田奈美(やまだなみ)さん
薬膳料理家、食養研究家、国際中医薬膳師。
「食べごと研究所」主宰。
雑誌やテレビなどで発酵食や薬膳レシピの制作・解説等を行うとともに、神奈川県・葉山のアトリエ「古家1681」で発酵教室や和の薬膳教室などのワークショップを開催し、日本の食文化を継承する活動を行う。
著書に「体を温め、めぐりをよくする妊娠中のごはん(家の光協会)」「漬けるだけ 発酵食レシピ(アスペクト)」「つよい体をつくる離乳食と子どもごはん(主婦と生活社)」など。
<ぬか漬け作りには、山田奈美さんのこちらの本がおすすめですよ。>
「ぬか漬けの基本 はじめる、続ける。」グラフィック社