九谷青窯の小林巧征さんと高原真由美さんのうつわが届いています。
いつも思うのは、モノの向こう側にいるヒトのことを知ると、そのモノがまるで体温を持ったかのように特別な存在として目に映るようになるということ。そんな存在に囲まれた生活は、忙しい毎日の暮らしの中でも私たちの心をちょっぴり豊かにしてくれる気がしています。
そんな今日は、うつわの作り手である小林巧征さんと高原真由美さんのお話。うつわの向こう側にある景色を、皆さんに少しでもお届けできたら嬉しいです。
■ 小林巧征さんの、素敵な偶然をのせたうつわ
小林巧征さんの作業場の窓際に佇む、数匹のネコの置き物。
時間のある時は近所の野良ネコに絵付けをするのが楽しいとそっと教えてくれたネコ好きの小林さん。「最近では窓の外から鳴いておねだりされるほど仲良しになったんです。それがまたすごく可愛いんですよ~」と嬉しそうに目を細めます。
そんな小林さんのご実家は、なんと窯元さん。小さな頃から陶工であるお父様の背中を見てきたせいか、昔はその光景が当たり前すぎて家のことにはまったく興味を持てなかったんだそう。その後大学で軽い気持ちで始めた陶芸に少しずつ魅せられて、「いずれは・・・」と家を継ぐ覚悟が固まってきたのだとおっしゃいます。
不自由になってしまうから、あえて絵付けのモチーフは決めないという小林さん。手が気持ち良いように動くのを感じながら、その瞬間に起きる様々な偶然を楽しんで描いているといいます。
写真の絵付けは、ひとつのカップに入っている呉須の上澄み、中盤、底のそれぞれの濃淡を使って、絵筆をピボットさせるかのように動かしてグラデーションを表現したもの。まるで柔らかな青い花びらが押し花にされたような、軽やかなうつわです。
小林さん
「本来は焼き上がるまでは分からない完成形も、波長のせいなのか、ふと生地に絵の具を乗せた瞬間にその色の変化が上手くいくはずと感じる時があるんです。そういう時はだいたいうまくいきますね。」
そんな小林さんの素敵な偶然をたくさんのせたうつわで、朝クロワッサンを食べたらなんだかとっても良い1日になりそう。これで朝を始めたい、そんな気になる1枚です。
■ 古き良きものたちから受け継いだ 高原真由美さんの大切なもの
昔から絵や物をつくるのが好きで、想いを言葉にするのが苦手だったという高原真由美さん。絵付けをしながらするお話がとっても上手で、「言葉にするのが苦手だった」だなんてちょっぴり信じられないくらい。
そんな高原さんのうつわのインスピレーションは「古き良きもの」。時代をたどると見えてくるその文脈から、うつわ作りにおいて学ぶことも多いのだとおっしゃいます。
高原さん
「時間のある時は、縁側で70年代のブルースを聞きながらぼーとするのが好きなんです。音楽もそうだけど、「大切なもの」ってジャンルを越えても変わらない気がして。」
そんな高原さんの今回のうつわたちも、明など古い時代の様々な土地のうつわから学んできたもの。高原さんというフィルターを通して、現代の食卓に寄り添うものにしています。
高原さんが、今うつわを介して行うコミュニケーション。古き良きものから教えてもらった大切なものを宿して、そっと私たちに語りかけてくれている気がするそんな高原さんのうつわです。
小林さんと高原さんのうつわは下記ページから。
作家さんたちが瞬間瞬間を閉じ込めているから、うつわにはひとつひとつに個性があります。それも作家さんもののうつわの楽しみ。その個性を味わうように、食卓の時間を楽しんでいただけたら嬉しいです。
= 文:宮城 写真:中島・宮城 =
【ご紹介した小林巧征さんと高原真由美さんのうつわはこちらからどうぞ】
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