「こーんにーちはーー」
見知らぬ私にそうのびのびと挨拶をしてくれる元気な小学生たちの通学路にそこはありました。
埼玉県幸手市にあるパン屋、cimai(シマイ)。
その名の通り、姉妹でやっておられるパン屋さんです。
小さな駅だし、しかもその最寄り駅からも徒歩で25分ほど。決して便利だとは言えないパン屋さんですが、近所のおばあちゃんから品川ナンバーで乗り付ける若いカップルまで、お客さんが途絶えることのないパン屋さんです。
■ 姉妹の、cimai
cimaiは、お姉さんの真紀子さんと妹さんの有紀子さんが切り盛りするパン屋さん。
主に真紀子さんは天然酵母のパンを、有紀子さんがイーストのパンをと、2人でそれぞれ分担をして焼いています。
8年ほど前にオープンしたというお店は、白い漆喰の壁と古い床材が敷かれた空間の中に趣のある家具が配置されていて、なんだか凛とした佇まい。限りある予算の中、アンティークのドアや建具も自分たちで探しだし、漆喰の壁もまた自分たちで塗ったとおっしゃいます。
その凛とした世界観にずっと浸っていたいような気持ちの中、cimaiの活動にあたって大切にされていることを聞いてみました。
「対内的なこととしては、楽しみながら作ることを大切にしています。
パンは手で作るものだから、きっと私たちが何を感じて何を思っているのかパンを通してお客様に伝わってしまうはず。
だから毎日の生活を充実させることはとても大切にしていて、スタッフの面接でも仕事だけではなく充実した毎日を送って欲しいと伝えているんですよ。
対外的には、お客さまにパンだけではなく、衣食住を通してウキウキできるような気持ちを提供したいと思っているんです。
お店の2階で時々行うイベント(ヨガやワークショップなど)も、そんな気持ちから行っています。」
そんなおふたりの想いが伝わったのか、お店にはひとりのファンの可愛らしいエピソードも!
「この小窓(写真・下)からね、いつも作業場を覗いている女の子がいたんです。
そしたらば、その子がパン屋さんになりたいって!
数年してその子は本当に製菓学校に通うようになったんだけど、ちょっぴり道が変わって今はパティスリーになっちゃった。今も時々彼と遊びに来るんですよ。」
目を細めてそうおっしゃる妹の有紀子さん。
なんだかとっておきの宝物を見せてもらったような、そんな気持ちです。
■ cimaiさんから教えてもらった パンをいつでも美味しくいただく方法
cimaiのパンは、季節や時間によって焼くものが異なります。
お姉さんの真紀子さんのおすすめは「黒糖クルミパン」。
cimaiのシグネチャーともいえる、コクのある黒糖の甘みと香ばしいクルミの風味がしみじみ美味しいパンです。
妹さんの有紀子さんのおすすめは「エムブラン」。
普段イーストでパンを焼く有紀子さんにとって、エムブランは初めて自家製酵母を使って作ったパン。あれこれ配合に苦労して、ひときわ思い入れも強いパンなのだとか。
そんなおふたりに、cimaiのパンを日にちが経っても美味しくいただく方法を聞いてみました。
「ハード系のパンは冷凍をして自然解凍したら、パンにたっぷりと手や霧吹きなどで水を含ませて熱々の状態にしたトースターで焼くといいですよ。
それに対して柔らかめのパンは水は少しで大丈夫です。
ポイントは、とにかく熱々のトースターで、というところですね。」
今回いただいてきたのは、左から
・黒糖くるみパン
・キャラメルとナッツのスコーン
・いちじくパン
(我慢できずにちょっと食べちゃいました!)
cimaiのパンを楽しむには、予約をして夕方に来るのがおすすめだそうです。
夕暮れ時にじんわり温かい焼きたてのパンが入った紙袋を抱えて帰る、なんだかちょっぴり贅沢な幸せ。
次の週末もまた足を延ばしたい、姉妹の世界観が詰まった「cimai」です。
= 文・写真:宮城 =
【今回お邪魔したパン屋さん】
cimai
場所:埼玉県幸手市 大字幸手2058−1−2
電話:0480-44-2576
URL:http://www.cimai.info/
※HPで営業日や開催イベントを確認することができます。今週末は東京・青山パン祭りにも少しだけ出店されるそうですよ。
<cimaiさんのこちらの本もどうぞ宜しくお願いします!>
cimaiのイーストと天然酵母のパンレシピ (マイナビ出版)
cimaiのずっしり天然酵母パンともっちりイーストパン (中央公論新社)